My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「なんだい。やっぱりそういう関係なんじゃないか」
アヴェイラの呆れたような声を聞いて慌てて振り返る。
「た、多分、フィルくん何か勘違いしてるんだと思う」
おそらくはリディと同じようにラグが私のことをよく見ているからとか、そんな理由だろう。
「本当に、そんな関係じゃなくて」
「ふん、頑なだねぇ」
そう肩を竦めベッドの方へと歩いていくアヴェイラ。
「想い合ってるって、素直に認めちまえばいいのにさ」
どきりとする。
ベッドに腰を下ろし、彼女は窓から青い海を眺めた。
「羨ましいくらいだよ」
そう小さく呟くのが聞こえて、つい、口が滑ってしまった。
「それってグリスノートのこと?」
「はぁ!?」
物凄い勢いでアヴェイラがこちらを振り返った。
「なんでそこであいつの名前が出てくるんだい!?」
「えっ、や、えっと」
立ち上がりツカツカとこちらに向かってくるアヴェイラ。
鬼気迫る勢いで詰め寄られ、やっぱり不味かったかと冷や汗をかいていると彼女は震える声で言った。
「あんたまさか、やっぱりその歌であいつをたぶらかしたのかい!?」
「え!? 違う違う! グリスノートは私が歌えるって知らなかったし」
「でもフィルを助けたときに歌っていたじゃないか!」
「そ、そうだけど、でもグリスノートは銀のセイレーンのことは殺したいほど憎んでるみたいだから」
自分で言いながら思い出す。
(そうだ、明日グリスノートに気を付けなきゃいけないんだ)
殺されたくはない。なんとか直接会わないようにしないと。
アヴェイラもそれを聞いて驚いたようで、その顔から怒りが抜け落ちたのがわかった。
「そうなのかい? そりゃ初耳だね」
「うん! だからそうじゃなくて……アヴェイラが、もしかしてグリスノートのことを想ってるのかなって」
思い切って言ってしまうと、その目が大きく見開かれた。