My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
13.嵐の前夜
歌の練習はそのまま日が沈むまで続き、アヴェイラは窓の向こうが暗くなったことに気づくと明日の最終確認のため部屋を出て行った。
ひとりになってベッドの上で一息つく。
アヴェイラの歌はもう完璧だ。これが初めての歌とは思えないほどにその歌声は魅力的で。あとは明日グリスノートの前でも同じようにちゃんと歌えるかどうかだけれど。
(アヴェイラなら、きっと大丈夫)
私もグリスノートの反応が今からとても楽しみだった。
――それにしても。
(あれは、夢……だったのかな)
今朝「埴生の宿」を歌ったときに束の間見えた幼馴染の姿。
海賊たちも故郷が見えたと言っていた。だとしたら私が歌いながら故郷の、あちらの世界の幻を見ても不思議ではない。それがきっと銀のセイレーンの力なのだろうから。