My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
(でも、やけにリアルだったなぁ)
3年ぶりに見た幼馴染は少し大人になっていた。背も随分伸びていたように思う。
それに彼がいたあの部屋。今の彼の部屋など知るはずがないのに。
……もしかして、あれは夢や幻などではなく現実で、一時的にあちらの世界に戻れたのでは。
そう考えた方が納得がいくほどにリアルだった。
ざわりと、胸が音を立てる。
(……もし、)
もし本当にあの歌の力で戻れたのだとしたら。
私は自分の両手を見つめる。
あのとき、伸ばされたあの手を掴んでいたら……。
(今、もう一度あの歌を歌ったら、どうなるんだろう)
どくどくと胸の音が大きくなる。
口を開いて、小さく息を吸って、あのメロディーをもう一度口ずさもうとして。
ふいに浮かんだのは、彼の不機嫌な顔だった。
「歌えないよ……」
口から出たのは歌声ではなく、そんな呟きだった。