My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
だって、今私がこの世界からいなくなってしまったら、彼の――ラグの呪いが解けないままになってしまう。
セリーンにお礼を言えないままになってしまう。
エルネストさんだって、私を待っている。
“もしかしたら”という、ただの憶測に過ぎないのに。
歌うことが、出来なかった。
コンコンッ
ノックの音にびくりと肩を竦める。
「俺です。フィルです。夕食を持ってきました」
その声に少しほっとして、私はベッドから立ち上がった。
扉を開けると、フィルくんが食事の乗ったトレーを持って立っていて私は笑顔でお礼を言う。
「ありがとう。アヴェイラは?」
「明日の打ち合わせが長引いているみたいで、代わりに俺が」
「そう」