My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
トレーを受け取ると、フィルくんが口を開いた。
「明日いよいよですね。俺、皆に心配かけて謝らなくちゃ」
申し訳なさそうに目を伏せるフィルくん。
「ラグさんにも。俺の不注意のせいでカノンさんを危険な目に遭わせてしまったんで」
その言い方に少しの引っ掛かりを覚えて。
「では、俺はこれで」
「あ、フィルくん」
背を向けようとしたフィルくんを私は引き留めていた。
「ちょっと訊きたいことがあるんだけど、今いい?」
「はい?」
目をぱちくりさせたフィルくんに私は小声で言う。
「朝、ラグが私を……って言ってたけど」
「?」
何のことかわからない様子で小首を傾げる彼。
「ほら、惚れてる、とかって。なんでそう思ったのかなって、思って……」
言いながらじわじわと顔が熱くなってくる。
(なんで私、こんなこと訊いてるんだろう)