My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
フィルくんは急に興奮したように目を輝かせた。
「ラグさんすごくカッコ良かったんですよ! 船長に向かって『カノンにこれ以上近づくな』って。俺聞いてて痺れちゃいました! だから俺、実はおふたりはお付き合いされているんだとばかり……」
私が目を見開いたまま何も反応できないでいると、フィルくんはもう一度首を傾げた。
「ならラグさんはなんで……あっ!!」
そこで急にフィルくんは大きな声を出して自分の口を両手で塞いだ。その青くなった顔にははっきりと“マズイ”と書いてあって。
「す、すいません! 俺……今の全部聞かなかったことにしてください!」
ぺこりと頭を下げて、逃げるようにして彼は去って行ってしまった。
「……え?」
残された私はトレーを持ったまま、少しの間その場を動くことが出来なかった。