My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
(人質かぁ……)
小さな後ろ姿はすぐに海と空の青に溶け込み見えなくなってしまって、私はドキドキとする胸を押さえた。
――結局、昨夜はよく眠れなかった。
この作戦がうまくいくのか気がかりだったのもあるが、それよりも。
(ラグと会うのに、なんでこんなに緊張してるんだろう)
焦りにも似た、はじめての感覚。また怒られるという緊張感とも少し違う。
彼と顔を合わせるのはあの夜以来。だからだろうか。
ほんの数日間会わなかっただけなのに、まるで数年ぶりに会うような、そわそわとした妙な高揚感があった。