My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「そうだ! お前が歌、歌とうるせぇからお頭が歌ってやったんだ!」

 また別の海賊がグリスノートに向かって大声で怒鳴った。

「いい加減お頭の気持ちに気づけよな、この鈍感野郎!」

 ……私の言いたかったこと全て彼らが言ってくれた。
 皆やはりアヴェイラの気持ちをわかっていて、わかった上で彼女の下についているのだ。

「こいつの気持ちっつったって……」

 グリスノートが戸惑うようにもう一度アヴェイラを見下ろした、そのとき。

「きゃあああ!!」

 いきなり甲高い悲鳴が上がった。
 驚いて顔を上げて気づく。いつの間にか空色の旗を掲げた船がすぐそこまで接近していた。

「みんな……っ」

 フィルくんの上ずった声。
 セリーン、リディ、コードさん、船員たちが皆船縁から身を乗り出しこちらを見つめていた。その視線の先はフィルくんやグリスノートではなく、意識のないアヴェイラだ。

「ラグさん酷いわ!」

 先ほど悲鳴を上げたリディが叫ぶ。

(え、ラグ?)

 見ると、ラグも眉間に思いっきり皴を寄せそちらを見上げていた。

「遅かったか」
「船長だけじゃ、やっぱ無理だったんスよ」

 セリーンとコードさんもやけに神妙な顔つきをしていて、再びリディの叫び声が響いた。
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