My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「いくらカノンが心配だからって、なにも殺さなくたっていいじゃない!」
「殺してねぇ!!」
ラグが即様怒鳴り返し、アヴェイラを指さした。
「そいつが歌に失敗して勝手にぶっ倒れただけだ!」
「え……?」
呆けた顔で固まるリディ。
セリーンやコードさんたちもそれを聞いて安堵したように肩を下ろした。
(そっか。皆、アヴェイラが倒れているのを見て勘違いしたんだ)
「……煩いねぇ」
聞こえたその声にハっとして見れば、アヴェイラがグリスノートの腕の中で小さく身じろぎしていた。気が付いたみたいだ。
「一体、なんの騒ぎだい……?」
その瞳がゆっくりと開き、そのまま限界まで見開かれていく。
彼女の瞳に映っているだろうグリスノートがそれを見てふぅと息を吐いて。
「よぉ、目が覚めたか」
「いっ、やああああああーーーー!!?」
アヴェイラは天をつんざくようなすさまじい悲鳴を上げた。
思わず耳をふさごうとして、手首が縛られていることを思い出し数歩後退りしたほどだ。