My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「あんたはちゃんと素直になりなね」
ばちんとウィンクされて、えっと小さく声を上げたその時だ。
「ひぇっ!?」
急に視界がぐるんと回ってびっくりする。覚えのある温もりを感じてラグに抱き上げられたのだとわかって。
「港まで飛ぶぞ」
「え!?」
てっきり向こうの船に戻るのだと思っていた私は驚いてそちらを見上げる。
こちらを心配そうに見つめているセリーンやリディ、皆と目が合って、しかしすぐにラグの優しい声が聞こえてきて私は慌てて彼の服を掴んだ。
「じゃあね、カノン!」
「アヴェイラ……!」
笑顔で手を振る彼女に、素直になるのはそっちでしょとか他にも言いたいことはたくさんあったけれど。
「ご飯とか色々ありがとう!」
「風を此処に……!」
お礼の言葉がラグの声と重なる。
優しい風に包まれて私たちは空へと舞い上がった。ピンクの旗が目の端に映ったのが最後。
「~~~~!!」
いくつかの怒声が風の音に紛れ聞こえてきて、セリーンやグリスノートだろうとわかったがもう目を開けていられなかった。