My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
どのくらい飛んでいただろう。次第に風が弱まって、トンっとラグが地面に足を着けたのがわかった。
ゆっくりと目を開けて、そこが人気のない路地だとわかる。倉庫のような同じ建物がずっと立ち並んでいて、もうとっくに夜は明けているというのに薄暗かった。
ラグが体勢を低くして私はその腕から降りる。
包んでいた風が彼から離れていき、そしてその身体が再び小さく縮んでいく。
ふぅと息を吐いた少年を見ながらまずなんと言おうか逡巡していると。
「腕出せ」
「え? あっ」
ラグが腰からナイフを抜くのを見て、私はまだロープで縛られたままだったことに気付く。
「ありがとう」
腕を差し出すと彼は小さく舌打ちをした。
「ナイフを使うまでもねぇじゃねーか」
ラグは呆れたふうに言ってナイフを仕舞い手で結び目を解き始めた。
私の肩の辺りしか背のない少年を見下ろしながら、私は先ほどのアヴェイラの言葉を思い出していた。