My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
(不機嫌なのは今に始まったことじゃないけど……)
この10日間、同じ船に乗ってはいてもこれまでに比べて極端に話す機会が少ないせいか、なんだかとても寂しく思えた。
この世界に来てからラグはいつもすぐ傍にいる存在で、だから余計にそう感じるのかもしれないけれど。
(エルネストさんの元に辿り着けたら、もうお別れなのにな)
「カノン、片づけて私たちも朝食にしよう」
「あ、はーい」
セリーンに言われ私は暗い気持ちを振り払い、テーブルの上に散乱した食器に手を伸ばした。そのときだ。
「ずっと気になってたんだけど」
「え?」
顔を上げると、リディがなんだか少し緊張したような面持ちでじっとこちらを見つめていた。
「ラグさんとカノンって、本当に何もないの?」
「へ?」