My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「カノン!?」
「離せー!!」
「ボートを出せー!!」
ラグさんと兄貴の声がほぼ同時に上がり、見れば兄貴が暴れる小さなラグさんを羽交い絞めにしていた。
何人かがバシャバシャと足音を立てながらボートを放しに向かう。
祈る思いでもう一度カノンが落ちた辺りを見つめると、見張り台から声が掛かった。
「船長、フィルです! フィルがいました! 姐さんも無事です!!」
「やったわ!」
思わず歓声を上げていた。でもここからではその姿までは見えない。
海に放されたボートにラグさんが飛び乗り、セリーンさんがその後に続く。そのとき再び銀の光が空へ舞うのが見えた。
丁度辺りが明るくなって、いつの間にか雨が上がっていることに気付く。
歌声が再び聞こえてきて、フィルを抱えたカノンがふらふらとこちらに戻ってくる。