My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
ほっとした、そのときだった。
「え!?」
突然カノンが進路を変えた。違う、突風に煽られたのだ。
「船長! 前方にアヴェイラの船です!!」
「!?」
「はぁ!?」
見張り台から降ってきた狼狽えたような声に驚く。
そちらの方角にはまだ分厚い黒雲がずっと続いていて、その暗がりの中に一隻の帆船が確かに見えた。
カノンがそちらへと吸い寄せられるようにして飛んでいくのを見て、まさかと青くなる。
「なんで……!」
「アヴェイラの奴、何考えてんだ!」
兄貴もアヴェイラの仕業だとすぐに気づいたのだろう。
「くっそーー!!」
ラグさんの悔しげな怒声が聞こえてきて胸の下辺りがぎゅうっと苦しくなった。