My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「なら、今はブゥを信じるしかないだろう」
セリーンさんが優しくラグさんの肩に手を置く。でもラグさんはバシっとその手を払ってしまった。
「あの船はどこに向かったんだ」
「おそらくアジトだと思うが」
「それはどこにある」
「俺たちが知るわけねーだろ」
兄貴が答えるとラグさんは舌打ちをして、それから自分のまだ小さな両手を見つめた。
「くそっ、早く戻れよ! なんで戻らねーんだ!!」
ラグさんが両手を震わせ悔しげに叫ぶのを見て、誰も何も言えなかった。
ラグさんが元の姿に戻ったときには、もうどこにもアヴェイラの船はなかった。
私たちは話し合い、このままアピアチェーレの港に向かうことにした。
ラグさんはブゥに手紙を持たせたのだそうだ。
カノンたちがアヴェイラの船から自力で逃げ出せた場合、または解放された後は「港」に来るようにと。
だから今はアピアチェーレの港で会えることを信じて進むしかなかった。
ラグさんは何度も何度も空を飛び、周辺の海を見渡して戻って来ては少年の姿に変わるを繰り返し、相当イラついているように見えた。……誰も近づける雰囲気ではなかった。