My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
17.ふたりきり
(気まずい……)
ゆったりと流れる川のほとりを私はラグの背中を見ながら歩いていた。
アピアチェーレの港町を出たときにはまだ低かった太陽が、今がほぼ真上にある。
向かう先には黒い山々が連なり、辺りはなんとものどかな田園風景が広がっていた。
レーネの街はあの山のふもとに位置していて、この川沿いをずっと行けば辿り着くのだそうだ。そして目的地である森はその周囲に広がっていたらしい。
日差しはぽかぽかとあたたかいし川から吹いてくる風は心地よくて、ずっと歩き通しでもそれほど苦ではなかった。――けれど。
(気まずいなぁ)
これからレーネまで約三日間、それまでラグとふたりきり。(ブゥは寝ているし)
レーネに着く前に訊いておきたいことはたくさんあったけれど、全部彼の逆鱗に触れそうで下手に話しかけられずにいた。