My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「金髪野郎が本当にお前が帰るための楽譜を持っていたらの話だが、帰らないって選択肢もあるだろ」
「勿論帰るよ! そのためにここまで来たんだから!」

 そう答えながら、なぜかつきりと小さく胸が痛んだ気がした。

「そうだよな」

 すぐにそんな素っ気ない言葉が返ってきて、またあのときの言葉が蘇った。

 ――帰れなくても、居場所が出来て良かったじゃねぇか。

 ぎゅうっと拳を強く握る。

(そうだ。ラグは私が帰っても帰らなくても、どうでもいいんだった)

 私は帰るんだ。私の本当の居場所に。
 セリーンやブルーの皆にちゃんとお別れの言葉が言えなかったのはすごく残念だけれど、でも帰るためにこうして長く旅をしてきたのだから。

(……そういえば)

 ふと、アヴェイラの船で『埴生の宿』を歌ったときのことを思い出した。一瞬だけ帰れたかもしれないことを。
 そのことを話したら、彼は一体どんな反応をするだろう。
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