My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「――あ、あのね、」
そう言いかけたとき、ラグがぴたりと足を止めた。
危うくその背中にぶつかりそうになって、小さく舌打ちをした彼の横顔を見上げる。川の茂みの奥を見つめるその瞳に警戒の色を見てぎくりとする。
「もしかして」
「離れるなよ。それと何もするな」
「う、うん」
頷いたそのとき、視線の先の茂みがガサガサッと大きく動いてそいつらが一斉に飛び出してきた。
私達の行く手を阻むように立ちはだかったのは総勢5人の男達。
皆長剣やナイフを手にし、その見た目から野盗だとすぐにわかった。でも。
(あれ?)
「運が悪かったな。金目のもん全部置いていけば命は助けてやるぜ」
中心に立つひょろ長い顔をした30代半ば程の男が偉そうに言う。
でもラグが何も言わずに腰のナイフに触れると、野盗たちは少しだけ怯んだようだった。
「ふん、よほど自信があるようだな。だが俺たちはそんじょそこらの賊とは違うぜ。なんたって俺様はあのストレッタ出身の魔導術士なんだからな!」
どうだ! と言わんばかりに声を張り上げた男を見て、私は思わず大きな声で叫んでいた。
「やっぱりあのときの偽者!」
「は!?」
私に思いっきり指差されたその男は焦ったように顔を歪めた。