My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「ちょっと、」
「ほらよ」
私の言葉を遮るようにラグは頭に向かって何かを放り投げた。
「あ?」
その小さな革袋を受け取った頭は間抜けな顔でそれを見下ろし、そして大きく目を見開いた。
「な、なんのつもりだ!」
「金が欲しいんだろ。それやるからそこを退け。急いでんだよ」
「!?」
私は驚いてラグの横顔を見上げる。
「俺様は勝負しろって」
「ああありがとうございました! 頭ほら行きますよ!」
子分のひとりがへこへことこちらにお辞儀しながら頭の腕をがっしりと掴んだ。
「お、おい、ふざけんな!」
他の子分たちも同じように頭の腕やら腰やらを掴んでズルズルと茂みの方へと引っ張っていく。
「どうぞ行ってください!」
「お前ら何してんだ! 俺はそいつと勝負をだな!」
道が開いて、ラグが平然と進み始める。
「え? で、でも」
「行くぞ」
睨むように言われて、仕方なく後ろ髪を引かれる思いでついて行く。