My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
――ラグは自分がラグ・エヴァンス本人だと言うつもりはないし、レーネに近いこの場所で術を使う気もないのだろう。わかっている。
ついさっきまで一緒にいたアヴェイラだって海賊で、誰かから金品を奪うという悪いことをしている。あの野盗も一応術士で、もしかしたらアヴェイラのようにそのせいでこれまで酷い目に遭ってきたのかもしれない。それで野盗を始めたのかもしれない。
でも、それでもどうしても納得がいかなくて。
「俺様はあのラグ・エヴァンスだぞー! 戻ってこい、この腰抜けがあああー!!」
聞こえてきたその声に我慢がならず、私は振り向いて叫んでいた。
「ラグは、ラグ・エヴァンスは! あなたみたいに自分の力をひけらかしたりなんかしないんだから!」
「おいっ」
ラグの止める声が聞こえたが止まれなかった。
「それに、ラグはあなたなんかよりずっと強いし、優しいし、カッコいいんだからねーー!!」
「なんだとこのアマぁーー!!」
「頭ぁ!」
「ほら頭、この金でうまい酒でも飲み行きましょうって!」
子分たちに羽交い絞めにされながら怒鳴っている頭にふんっと背を向ける。
するとラグが心底呆れたような顔で私を見ていた。