My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「お前なぁ」
「だって! やっぱり悔しくて……っ」
ラグが大きな溜息をついて、また前を向いてしまった。
そんな彼を追いかけながら声を掛ける。
「お金、本当に渡しちゃってよかったの?」
「平気だ。あれで全部ってわけじゃない」
「そっか……」
でも、あんな奴らに少しでもあげてしまうのはやっぱり腹立たしかった。
(ラグは、悔しくないのかな……)
その後ろ姿を見つめて、ふと、彼の耳の後ろが赤くなっていることに気が付いた。
首を傾げて、そしてハっとする。
(私、さっきとんでもないこと言わなかった!?)
怒りに任せて言ってしまった自分の台詞を思い出してぶわっと顔に熱が集中する。
何か言って誤魔化そうにももう今更で、恥ずかしくて頭が爆発しそうだった。
いつもならこんなとき突っ込んでくれる誰かがいた。別の話題を振れる誰かがいた。
でも今はふたりきり。誰も、この気まずい雰囲気をどうにかしてくれる人はいない。
(やっぱり、ふたりきりは気まずいよ~~)
せめてブゥが少しでも早く起きてくれますようにと願いながら、私は顔の熱が冷めるのを待った。