My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
18.居場所
「街に入ったら、オレの名前は絶対に口にするなよ」
前方に建物の屋根が見え始めて、やっと何か食べられると思っているとラグがこちらを振り返り言った。
その少し硬い表情を見てどきりとする。
「わ、わかった」
私がしっかりと頷くとラグは再び前を向き歩き出した。
(そっか。レーネが近いんだし、ラグのことを知っている人がいるかもしれないんだ)
ただ“知っている”という人だけじゃない。もしかしたらラグのことを恨んでいる人もいるかもしれないのだ。
そう思ったら急に心配になってきて、私は駆け足でラグの横に並んだ。
「私、ご飯まだ我慢できるよ。だから街に入らなくても」
私のために無理をして街に入ろうとしてくれているのなら……と思ったのだけれど、ラグは横目でちらっとこちらを見て小さく息を吐いた。