My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「オレだって腹は減ってるんだ。それに補充しておきたいもんもある」
「そ、そっか。じゃあ、ちょっと変装してったりとか」
「今のままで問題ない。オレが前にこの辺りに来たのは7、8年前だ。普通にしてりゃバレっこない」
「そうかもしれないけど……」
「変にビクついてると逆に怪しまれるからな」
念を押すように軽く睨まれて私は何度も頷く。
「そうだね。気を付ける」
「……アルの奴が、よく言ってただろ」
「え?」
ラグが街の方を見つめた。
「昔のオレと今のオレは全然違うってな。だから、大丈夫だ」
その横顔を見上げ小さく驚く。
確かにアルさんは「昔は可愛かったのに」とよく口にしていたけれど、ラグがそんなことを言うなんて。
私を安心させるためというより自分にそう言い聞かせているように思えて。
「うん!」
私はもう一度大きく頷き街の方を見据えた。
――今は、アルさんもセリーンもいないのだ。
ぐっと強く拳を握り気を引き締める。
(いざとなったら、私がラグを守らなきゃ!)