My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
――と、意気込んだものの。
「本当に、全然大丈夫だったね」
「だからそう言っただろ」
私たちは拍子抜けするほどあっさりとその街を通過することが出来た。
水車のついた小さな食堂で久しぶりにちゃんとした料理を口にしてお腹も大満足。ラグも露店でこれからの旅に必要なものを入手していた。
その間、特に怪しまれたり視線を感じたりすることもなかった。
(このまま何事もなくレーネの森に着けるといいな)
そう思っているとラグが大分傾きかけた太陽を見上げた。
「少し急ぐぞ。日が暮れる前に次の街に着きたいからな。野宿は嫌だろ」
「うん!」
早速ラグは足を速め、私は遅れないようにその背中を追いかけた。
(久しぶりにちゃんとしたベッドで寝れるー!)
船ではずっとハンモックだったから揺れないベッドで眠れるのが楽しみで仕方なかった。そのためなら頑張れると思った。――でも。
(ん? ちょっと待って。もしかして……)
ラグの後ろ姿を見つめながら私は気づかないでいいことに、気づいてしまった。