My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
そして、案の定。
「一室頼む」
(やっぱりねーーーー!?)
ラグが辿り着いた街の宿で主人にそう言うのを聞いて、私は心の中で情けない叫び声を上げていた。
あれだけもう離れるなと言っていた彼のことだから二部屋とることはないだろうとわかっていた。
わかっていたけれど。
(今ふたりきりは、やっぱり気まずいよ~)
部屋への階段を彼について上りながら、いよいよ煩くなってきた胸を押さえる。
せめて気づくのがもう少し遅ければ。
この宿に入る前、すぐ近くの食堂で夕飯を食べている間もずっと気になってしまって味なんてろくにわからなかった。
セリーンの存在が今までどれだけ有難かったか、改めて身に染みて感じていた。