My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
(あのときは、どうしたんだっけ……)
セリーンと出会う前、セデの町でふたりきりで宿に泊まったときのことを思い出す。
あのときも確か男の人と同じ部屋で寝るなんてと緊張を覚えて、でもエルネストさんが現れてそれどころではなくなってしまったのだ。
それにあのときラグは私の足の怪我を術で治してくれて少年の姿だった。
今も少年の姿だったなら、そこまで緊張しないですみそうなのに。そう思いながら長身の背中を睨み見る。
(だからって、術を使ってなんて言えるはずないし……)
私がそんなことを考えている間にもラグはさっさと一番奥の部屋の前に辿り着きドアを押し開いた。
でも、彼はそのまま動かなくなってしまった。
「?」
不思議に思い遅れて私も部屋を覗き込んで。
「!!?」
声にならない声が漏れてしまった。
その部屋は角部屋だけあって広く窓も多くて解放感があったが、ベッドがひとつしかなかった。
(なんでダブルベッド!?)