My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「――あ、あの部屋で大丈夫です! ありがとうございました」
私は笑顔でお礼を言ってラグを階段の方へと押しやった。
「お、おい」
「変に目立ったらマズイでしょ!」
彼の背中を押しながらもう一度階段を上り私は小声で続ける。
「野宿は嫌だし、しょうがないよ。……私は、別に気にしないから」
彼の顔は見られなかったけれど、私はそう言って部屋の前まで彼を押していった。
――そうだ。変に意識するからいけないのだ。いや、意識する方がおかしい。
私たちはあくまでただの旅の仲間なのだから、何もあるはずがない。
(意識なんて全っ然してないんだから!)
「ぶーぅっ!」
「ブゥ、おはよう!」
部屋の扉を閉めた途端、ブゥがラグのポケットから飛び出した。
そう、それにブゥもいる。完全にふたりきりというわけじゃない。