My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
窓辺を背にして彼は続ける。
「また空振りの可能性もある。金髪野郎が本当にいたとして、あいつが大ボラ吹きの可能性もある」
――そうだ。
自分の歌で、もしかしたら帰れたかもしれないことを、まだ彼に伝えていない。
「わ、わかってるよ。大丈夫」
伝えたほうがいいだろうか。伝えたら、彼はどうするだろうか。
「ま、帰れなかったとしても、海賊の嫁になればいいしな」
またそんなことを言われて、つい、カチンと来てしまった。
「だからそれはありえないから! 私はグリスノートのことはなんとも思ってないし、好きでもない人のお嫁さんになんてならないよ!」
――まずい。
怒りの感情とともに、また、あの台詞が耳によみがえった。
「それに、私の居場所はこの世界にはないから」
声が、カッコ悪く震えてしまった。