My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
あのとき返せなかった言葉を返すことが出来たのだ。なのに、全然すっきりしない。むしろ胸がズキズキと痛くて彼の顔を見ることが出来なかった。
「……そうか」
ラグが低く呟くのが聞こえて、そのときブゥが彼の方へ飛んでいくのが横目に見えた。そんなブゥを目で追いながら、私はもう一度口を開く。
「ラグは、私が帰ったら少しは寂しがってくれる?」
「は?」
その目が大きく見開かれる。
……何を言っているのだろう。
そんなことを訊いて、彼が寂しいなんて言ってくれるはずがないのに。
「――わ、私は寂しいんだ。帰りたいけど、ラグやブゥやセリーンとお別れしなきゃいけないのは、すごく、寂しくて」
「それでも、帰るんだろ」
「そ、そうだけど……」
結局また顔が見れなくなってしまった。
――やっぱり、こんなこと言うんじゃなかった。
感情がぐちゃぐちゃで、なぜか涙まで溢れてきて――。
「もし、オレが帰るなと言ったとしても、お前は帰るんだろ」
「え?」
視線を上げると、驚くほどまっすぐに向けられた青い瞳とぶつかった。