My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
19.彼のための歌
時間が、静止したように感じた。
彼は今なんと言っただろう。
“オレが帰るなと言ったとしても”
(それって……)
じわりと頬が熱くなる。
でも、その視線はすぐに外れてしまった。
「いや、なんでもない。……もう寝るぞ。明日も早いからな」
言いながら彼は上着を脱いで窓際に置かれていた椅子の背もたれに掛けると、その椅子に座り足を組んでさっさと目を閉じてしまった。
「――え!?」
一拍置いて私は慌てる。
「そこで寝るの!? ベッド使っていいんだよ! ラグだって疲れてるでしょ? こんなに大きなベッドだし、私は全然気にしないから!」
すると彼は薄目を開けぶっきらぼうに言った。
「うるせぇな。お前が気にしなくてもオレは気になんだよ」
そしてぷいと横を向いてまた目を瞑ってしまった。そんな彼の頭に乗ったブゥが私の方を不思議そうに見つめていて。