My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「ぶぅ~」
ブゥが小さく鳴きながらこちらに飛んできて私の肩に止まった。その頭を指で優しく撫でながらもう一度ラグの方を見る。
(いいのかな……)
そういえばリディの家でも彼は私とセリーンにベッドを譲ってくれたのだ。
口は悪いけれど、こういうとき彼は本当に優しいと思う。紳士、と言うべきだろうか。
と、そこで大きな欠伸が出てしまった。
静かになったからか急な眠気がやってきて、しかもすぐ目の前には気持ちよさそうな大きなベッド。
結局、私はその誘惑に勝てなかった。
「ありがとう、ラグ。ベッド使わせてもらうね」
もう眠ってしまったのか、答えは返ってこなかった。
久しぶりのちゃんとしたベッドに上がって、でも真ん中で寝るのは流石に気が引けて端っこの方に横になる。
そこからラグの方を見つめ、先ほどの彼の言葉を思い出す。
――あの瞳は、冗談を言っているようには見えなかった。
ラグも寂しいと思ってくれているのだろうか。
自惚れてしまって、いいのだろうか……?
仰向けになって深呼吸をすると、そのままスゥっとベッドに吸い込まれていく感じがした。
(もし、ラグに帰るなと言われたら、私は……)
意識が遠のいていく中で、
「勘弁してくれ」
そんな溜息交じりの呟きが聞こえたような気がしたけれど、もう夢か現実かわからなかった。