My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】



「――……っ」

 小さな呻き声で、私は目を覚ました。
 まだ部屋の中は暗い。寝入ってからそんなに時間は経っていないように思えた。

「うぅ……っ」

 気のせいかと思ったが、確かにその声は隣のベッドから聞こえてきて彼の方を見る。

(ラグ……?)

 寝言だろうか、その瞳は閉じたままだ。

「う、あ……やめ……っ」
「ラグ?」

 起き上がって、小さく声を掛けてみる。

「いやだ……もう、」

 苦しそうに首を振って何かから必死に抵抗しているように見えた。
 ブゥが心配そうにその周りをくるくると回っていて。

「ラグ」

 もう一度声を掛ける。

「ちがう、オレ、は……っ」

 その声は普段の彼からは想像もつかないほどに弱々しくて、私はこれ以上聞いていられなかった。

「ラグ!」
「――っ!?」

 驚いたように目を大きくしてこちらを向いた彼は、何が起こったかわかっていないようだった。

「……カノン……?」

 確認するように名前を呼ばれて、私は頷く。

「大丈夫? すごく、うなされてたから」

 彼はしばらくの間私をじっと見つめて、それから大きく深呼吸をしながら目を閉じた。

「……なんでもない……悪かった」
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