My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】

20.レーネの森


「起きろ」
「!」

 間近で聞こえた声にパっと目を開けると、すぐ目の前に朝から不機嫌そうなラグの顔があって飛び起きる。

「お、おはよう」
「……手」
「手?」

 自分の手を見て、彼の手をまだ握ったままだったことに気付く。

「ごめん!」

 慌てて両手を離して謝る。
 ――そうだ。昨夜、折角眠った彼を起こしたくなくて、手を握ったまま彼のベッドに上半身だけ預けて寝てしまったのだ。
 溜息を吐きながら起き上がる彼を見て、私は訊く。

「よく眠れた?」
「……お蔭さんで」
「良かった!」

 ほっとして言うとまたじろっと睨まれてしまった。

「良くねぇ。誰かに聞かれてたらどうすんだ」
「小さな声で歌ったし、大丈夫だよ」
「だといいけどな。ったく、オレが寝ちまったらいざってときに……」

 ぶつくさ文句を言いながらベッドを降りて支度をはじめた彼をじっと目で追いかける。
 確かに昨日よりも大分顔色が良く見える。
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