My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
男性は憎々しげな声で続ける。
「もし本物のラグ・エヴァンスだとしたらよ、今更なんのつもりだって話だよな。俺たちの生活をめちゃくちゃにしてくれやがって!」
ドンっとカウンターを叩く音にびくりと肩が震えてしまった。
店主がちらっとこちらを見る。
「まぁまぁ、朝っぱらからそんなに熱くなりなさんなって。レーネも大分復興してきてるんだろう?」
「まあな。生き残ったもんらであの頃のレーネを取り戻そうと頑張っちゃいるが、まだあちこち崩れたまんまで、あの頃のような量を採れるようになるにはまだ何年もかかるって話だ」
「そうか……何十年、いや何百年かけて築いてきたもんが一瞬で消えちまうんだもんなぁ……酷い話だ」
「全くだぜ」
ガタンとラグが立ち上がって、行くぞと目で訴えられる。
私は頷いて、残っていた水を飲み干し立ち上がった。