My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
なんて声を掛けていいかわからないまま、彼の後ろをただついていく。
知っていたはずなのに。
わかっていたはずなのに。
実際にその悪意を目の当たりにして一気に心が沈み込んでしまった。
……違う。
(私の気持ちなんてどうでもいい)
――彼は、大丈夫だろうか?
村を出て、また川沿いを進みながら先に口を開いたのはラグの方だった。
「昼頃にはレーネに着く予定だ」
「うん、わかった」
その背中に、出来る限り普通に返事をする。
「目的はレーネの森の方だが、宛てもなく探すには広すぎる。街に入って少し情報収集するつもりだ」
「うん」
出来る限り普通に頷く。
「また、さっきのようなことがあるかもしれない」
「!」
彼はいつもと変わらない声のトーンで続ける。
「だが、お前は何も気にする必要はないし、何もする必要もない」
「……っ」
何か言おうと口を開いたけれど、結局何の言葉も出てこなかった。