My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
――昨夜、彼のために歌って、彼が眠れて、お礼を言ってもらえてすごく嬉しかった。でも。
(結局、私に出来ることは何もない……)
「……ただ、お前がいれば多少のカモフラージュになる」
私は俯きかけていた顔を上げる。
(カモフラージュ……?)
私がいれば、ラグの正体がバレにくくなるってこと……?
「だから、オレから離れるな」
「うん、絶対に離れない!」
彼の声に被るように私は大きな声で答えていた。
それに驚いたのだろうか、彼は少しの間を開けてからぼそりと言った。
「わかったなら、いい」
「うん!」
暗くなっていた心に小さく灯りがともった気がした。
私がそばにいるだけでラグの役に立てるのなら。
彼がそれを望んでいるのなら。
(絶対に、離れない……!)
もう一度心の中で繰り返して、私は強く拳を握り締めた。