My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
村を出てからずっとなだらかな登り坂が続いていて、遠く見えていた山々がもう目の前に迫っていた。
標高が高くなってきたからか昨日より涼しくて歩き詰めで汗ばんだ肌に心地いい。
ふと見ればもうお日様がてっぺん近くて、私は思い切ってその背中に声をかけることにした。
「レーネってどういう街なの?」
「……」
案の定すぐには答えが返ってこなくて、慌てて続ける。
「ほら、情報訊くときに私また変なこと言っちゃったらマズいし、少しは知っておきたいなと思って」
すると小さな溜息が聞こえた。
「レーネは、鉱山の街だ」
「鉱山?」
「あの山で貴重な鉱物が採れる」
正面にそびえる山を彼は指差した。
「その採掘で栄えていた街だ」
それを聞いて、今朝食堂で怒鳴っていたあの男性の言葉が頭をよぎった。
(あの頃のような量を採れるようになるにはって、そのことだったんだ)