My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
3.アヴェイラとグリスノート
「面舵一杯!」
「面舵いっぱーい!」
グリスノートの発した号令をコードさんが復唱し、続いて仲間たちの声があちこちで上がった。
セリーンに言われ近くのロープをしっかりと掴むと船は向かってくる海賊船からよけるようにゆっくり右へと旋回していく。
しかしアヴェイラの帆船は妙な動きをしてこちらの船と進行方向を同じにすると、ぶつかるぎりぎりまで横づけにしてきた。同じ帆船のはずなのにこんな動きが出来るなんて、ひょっとしてこれも彼女が術士だからなのだろうか。
「よ~っほほほほほ!」
その顔がはっきりとわかるまで近づいた女海賊アヴェイラは勝気そうな笑みを浮かべ、良く通る高い声で言った。
「アンタの方からのこのこやって来るなんて一体どういう風の吹き回しだい、グリスノート!」
「てめぇと話をつけに来たんだよ、アヴェイラ!」
グリスノートも彼女に向かい大声で返す。