My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「だから全部、この森も全部消えたものと思っていた」
「……っ!」
やっと、彼が何に驚いているのかわかった。
以前、彼はレーネの森のことを『オレが消した』と話していた。レーネの街と共にこの森も消してしまったのだと。
でも、消えてはいなかったのだ。こうしてこの森はもう一度芽吹いてくれたのだ。
ここに来てそれがわかって、きっと彼は今とても嬉しいのだろう。その表情からはわかりにくいけれど、すごくすごく嬉しいのだろう。
「良かったね」
私が言うと彼がこちらを見た。
「良かったね、ラグ」
笑顔で言うと、彼は珍しく否定したりせずに頷いてくれた。
「あぁ」
そうしてもう一度眩しそうに木々を見上げたラグを見て、あぁ、好きだなぁと思った。
(私、この人が好きだなぁ)
自然にわき上がった気持ちに少し驚いたけれど、でももう抵抗したりしなかった。
不思議なくらいにすんなりと、このとき私はその気持ちを受け入れることが出来た。