My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「はい! 私、ずっとその場所を探して旅をしていて。彼にはその間ボディガードを頼んだんです。……夢なんです。セイレーンの歌を聴くことが。それで、つい最近このあたりにその場所があるっていう情報を掴んで……あの、マルテラさんは何か知りませんか? セイレーンの噂とか、歌を聴いたことがあるとか!」
勢い込んで言うと、彼女は困惑したように数回瞬きしてから首を横に振った。
「そんな話聞いたこともないわ」
「そ、そうですか……」
私が半分本気で肩を落とすと、マルテラさんは小さく息を吐いた。
「この街が目的でないならいいの。モンスターに困っているのは事実だし調査に協力してくれるのは有難いわ。あの子を助けてくれたことも感謝している。――でも、ごめんなさい。私はどうしても貴方を信用することが出来ない」
冷たく頑なな声に、ラグが頷く。
「あぁ。調査が終わったらすぐに出ていく」
「そう。……必要ないかもしれないけど、この部屋に使えるものがあったら使って。彼女にはそこのダガーなんていいんじゃないかしら」
棚のひとつを指さしてからマルテラさんは私の横をすり抜け部屋の入り口へと戻っていく。
そしてドアのところで立ち止まると、こちらに背を向けたまま言った。
「それと、この街や森の中ではもう魔導術は使わないで。……あんなことは、二度とごめんよ」
「あぁ……本当にすまなかった」
ラグがもう一度謝罪して、彼女はそのまま部屋を出ていった。