My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「そっちに行ったぞー!」
そんな誰かの鋭い声にびくりと身体が震える。
二匹のモンスターが木々の間を縫うようにして駆けてくるのが見えて咄嗟にダガーを抜こうとして――その手をやんわり掴まれた。
「そんな震えた手で抜くな」
「え?」
ラグがすぐ真横に立っていた。
「大丈夫だ」
穏やかな低い声。彼の視線を追ったそのとき、セリーンの大剣が一閃しモンスターたちがいっぺんに吹っ飛んでいった。
「ほらな」
今度は呆れたような声。
「お前が抜くまでもねぇ」
セリーンがこちらを振り向き安心させるように微笑むのを見て、私は放心状態で頷く。
「うん……」
そうだった。セリーンはめちゃくちゃ強いんだった。