My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「一匹逃げたぞー!」
そんな声が聞こえて、パシオさんがこちらを振り向いた。
「追います! 何か手がかりが見つかるかもしれません」
「わかった」
セリーンがそれに答えこちらを見た。
「走るぞ」
「うん!」
私は頷き彼女たちについて走り出した。
「確かにここに入っていったぞ」
何度も茂みに足を取られそうになり、呆れたラグに手を貸してもらってなんとか追いついたその場所には絶壁が立ちはだかっていた。
その足元に人が一人屈んでなんとか入れそうな横穴がぽっかりと口を開けていた。
「ここが奴らの巣穴か。結構深そうだな」
「流石にこの中に入るのは危険だな」
パシオさんも屈んで穴の中を覗き込みながら言った。
その背後に立つマルテラさんが腕を組んで溜息をつく。
「入るなら、それなりの準備が必要ね」
「こんなとこにこんな穴があるとはなぁ……まさか坑道まで繋がってないだろうな」
坑道と聞いて、この絶壁が例の鉱山なのだと気づく。
「仕方ない、今日はもう戻るか。日も大分落ちてきた」
パシオさんが立ち上がりながら空を見上げた。