My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「あ、あの」
背を向けた彼に思い切って声をかける。
「はい?」
「すみません、変なことを訊くんですが、この街で歌とかセイレーンの噂って聞いたことありませんか?」
先ほどマルテラさんには知らないと言われたけれど、出来る限り色んな人に確認しておきたかった。そのためにこの街に入ったのだから。
トランクさんは一瞬ぽかんとした顔をしたけれど、それから首を横に振った。
「いや、聞いたことないな」
「そ、そうですか。わかりました。ありがとうございます!」
お礼を言うと彼は軽く笑いもう一度セリーンたちに頭を下げてから詰所の方へと走っていった。
「手がかりはないままか?」
セリーンに言われて力なく頷く。
「そうだ。他の皆は? アヴェイラとか、あの後どうなったの?」
「まぁ、まずは中に入ろう。腹も減ったことだしな」
ラグがまた大きく溜息をついて、2階建てのその宿の扉を開けた。