My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「いらっしゃい。お待ちしていました」
カウンター越しに笑顔で迎えてくれたのは上品な白髪の男主人だった。
一階は食堂になっているようだが他の客はいない。
「聞きました。自警団に手を貸してくださったそうで。ありがとうございます。どうぞ今夜は当宿でゆっくりお休みください」
「あぁ、世話になる。腹が減っているのだが、何か食べられるか」
セリーンが誰もいない食堂を見まわしながら言うと主人は笑顔で頷いた。
「はい。今すぐご用意いたしますので、まずはお部屋の方へどうぞ。どの部屋を使っていただいても大丈夫です」
その言葉でやはりお客さんは他にいないのだとわかった。
モンスターがいつ襲ってくるかわからない街に誰も宿泊しようとは思わないだろう。
(私だってふたりがいなかったらきっと逃げ帰ってるだろうしなぁ……)
主人にお礼を言って、私たちは2階への階段を上がった。