My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
相変わらず不機嫌そうな彼を見上げ私は歓声を上げていた。
「ラグ、てめぇ遅かったじゃねぇか!」
グリスノートの怒声を無視し、彼は私とグリスノートの間に割り込むようにして前へ進み出た。そしてアヴェイラの帆船に向かって手をかざし口を開いた。
「すまない、少し力を貸してくれ……」
久しぶりに耳にするラグの優しい声音。
しかしそれを見たアヴェイラは驚愕の表情を浮かべた。
「術士!?」
「風を此処に……!」
びゅおっとうねるような音を立て白い帆に旋風が突っ込んでいく。
「皆何かに掴まれー!!」
アヴェイラが後ろを振り向き絶叫を上げた次の瞬間、彼女の船はトビウオのように一度飛び跳ねたあとすさまじい水しぶきを上げこの船を追い越していった。
「えぇ!?」
リディが悲鳴を上げ船縁から身を乗り出す。
あの勢いでは普通転覆してしまいそうだが風に守られているのかアヴェイラの船は傾くことなくまるで氷上を滑るようにただひたすらまっすぐに猛スピードで突き進んでいく。