My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「気づいたのはほんとついさっきでね、自分でもびっくりなんだけど」
笑って誤魔化そうとするけれど全然だめで、結局顔を上げていられなくなってしまった。
「でもっ、だからってどうにもできないのは自分でもわかってて、なんで今になって気づいちゃったんだろうって……」
吐露した気持ちと一緒にぼろぼろと涙が零れ落ちていく。
「だって私は、帰らなきゃいけないのに……っ」
そのときあったかい温もりに包まれて、セリーンに抱きしめられたのだとわかった。
「そうだな、辛いな」
私の頭を優しく撫でて彼女は言った。
――辛い?
その感情がすとんと心に落ちて、じわりと広がっていく。
……そうだ。
せめて傍にいられる間は彼の役に立ちたいだなんて、嘘。
そんなの、ただの強がりで……。
私は彼女の腕の中で頷く。
「うん、辛い。ほんとは、もっと一緒にいたい。まだ帰りたくない。なんで私は、この世界の人間じゃないんだろう……っ」
小さな子供みたいに泣きじゃくる私を、セリーンはただうんうんと頷きながら静かに受け止めてくれていた。