My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
26.小さな異変
いつから彼に惹かれていたのだろう。
最初はただ冷たくて、とっつきにくくて、怖い人だと思っていた。
それが頼りになる人に変わって、素直じゃないだけで本当は優しい人だと知った。
彼の過去を知って、彼を助けたいと思った。
彼が笑顔を見せてくれて、涙が出るほど嬉しかった。
多分、その頃にはもう私の中で彼の存在は大きくなっていたのだ。
「もしかしたらね、私エルネストさんに会わなくても帰れるかもしれないの」
涙が落ち着いてからそう明かすと、セリーンはその瞳を大きくした。
「アヴェイラの船にいたときにね、ある歌を歌ったんだけど、一瞬向こうの世界に帰れた気がしたんだ」
「それは、本当か」
こくりと頷く。