My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「向こうの友達と話せたの。手を差し伸べられて、でも私その手を掴めなくて……」
自分の両手を見つめながら続ける。
「その手を掴んでいたら、帰れたかもしれないわけか」
「……まだわからないけど、もう一度歌ってみるのもなんか怖くて」
セリーンが小さく息を吐いた。
「そうだったのか。……そのことを奴には」
首を横に振る。
「言ってない。なんか、言い出しづらくて」
……多分、彼の反応が怖いのだ。
もし、ならさっさと帰れなんて言われてしまったら――。
「ならカノンは今、奴のためにこの世界にいるのだな」
その優しい声に私は目を見開く。
(ラグのために、ここにいる……?)