My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
「正直、奴がこの街に入ったらもっと騒ぎになると思っていたが」
「あ……それが、一人だけラグのこと気付いている人がいるの」
――そうだ。彼女の話もセリーンにしておきたい。
その名を口にしようとして。
「自警団の副長だろう」
先に言われてびっくりする。
「奴のことを常に気にしている様子だったからな」
セリーンも気づいていたのだ。
「そ、そう。マルテラさん。ラグと知り合いみたいで」
「知り合い? ……奴がそう言ったのか?」
「ううん、詳しくは聞けてないんだけど、ラグが先に声を掛けたの。生きていたのかって。でもマルテラさんはラグのことをすごく警戒してて」
昼間のふたりの会話を思い出しながら続ける。
「でもね、ラグはマルテラさんに謝ったの。すまなかったって」
それにはやはりセリーンも驚いたようだった。
「奴が、謝ったのか」
私はしっかりと頷く。
「……そうか、わかった。私も気にしておこう」
セリーンにこのことを伝えられて少しほっとした。