My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 6【最終章】
階下におりると、まだそこにラグの姿はなかった。
三又の燭台に灯りがともった窓際のテーブルにはすでにたくさんの料理が並んでいて、食堂はいい香りに包まれていた。
「これは美味そうだ」
セリーンが嬉しそうに席に着き、私もその向かいの席に座る。
それにしても驚くほどの量だ。ソーセージや骨付き肉など肉料理が多いが芋やアスパラガスに似た野菜もしっかり添えられていて朝ぶりの食事に喉が鳴った。
「主人、酒とジュースを頼む!」
「はーい、ただいま~」
セリーンの注文に元気な声が返ってきて、間もなくして先ほどの主人が泡で盛り上がったビールみたいなお酒とジュースを持ってきてくれた。
「お連れ様の分はいかがいたしましょう」
「あぁ、気にしないで置いておいてくれ。すぐに下りて来るだろう」
主人は私の隣の席に今にも泡がこぼれてしまいそうなグラスを置き、ごゆっくりと言って戻っていった。
「さぁ、食べるぞ」
「うん」
階段の方をちらっと見上げてから私もジュースの入ったグラスを手に取った。